長崎ちゃんぽんと言うと、リンガーハットをまず思い浮べる人は多いのではないだろう
か。本場の長崎はともかく、私の住んでいる島原では、店舗が国道沿いにあることもあっ
て、地元の名店はあるにしろ、やっぱりちょっと幅を利かせているように見える。
島原のリンガーハットは、僕が子供のころから食べていた記憶があるから、もう40年くら
いはあの場所に建っているのだろうか。これだけ長く食べられると、チェーンのファスト
フードのイメージを超えて、「ちゃんぽん屋」の地位を獲得していると言えそうだ。
ともかく一杯のちゃんぽんで、しっかり栄養が取れて美味しいから、何かにつけてよく行った。僕にとってはソウルフードのようなものだ。
ちなみに僕は、リンガーハットの中でも、いろいろ手を加えたちゃんぽんは食べない。
牡蛎ちゃんぽんとか、野菜たっぷりちゃんぽんとか、まあ味見くらいで食べたことはあるが、ノーマルのやつが一番僕の気持ちにぴったりくる。ある時から、値段はそのままで麺2倍もしくは1.5倍というメニューが現れて歓喜した。若いころは2倍をよく食べたが、最近では、ちゃんぽん1.5倍、と注文するのが常となっている。
ここ数年、あまり行かなくなっていたが、先日、マーサさんが
「今度の誕生日には何を食べたい?」
と聞いてきたので、僕は、ちょっと考えて、ちゃんぽんを食べに行こう、と言ったのであった。
誕生日は気持ちを一新する日。そして歴史を振り返る日でもある。僕にとって、ちゃんぽんは、こういう時にうってつけの食べ物にちがいない。なぜなら僕の人生を通じて食べてきたものだからだ。ちゃんぽんを口にすると、あの時この時、特に若いころの気持ちも、心の感じもよみがえってくる。初心に帰り、あの頃の心に学び、人生を讃えるためにちゃんぽんを食べようと考えたのであった。
さて久しぶりに行ったお店のテーブルには、アクリルガラスのシールドが、立ててあった。マーサさんとはガラス越しの会食となって、何かおかしくて笑いあったものだが、出てきたちゃんぽんはいつもの味であった。
2021/12/7
近作の大理石彫刻
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