僕は、卵かけご飯が大好きでよく食べている。台所に何もない時は、別にこれだけでも満足だ。
卵かけご飯は、あのほんのりとした甘さが特徴的だと思うが、僕は長い間、この甘さは卵の甘さだと思っていた。
ところがある日のこと、この甘さは卵だけではなく、醤油があってのことだということが分かった。
学生のころ、独り暮らしのアパートで、重宝した食べ物がある。桜飯と呼ばれるもので、お米を仕込む時に、ただ醤油を加えて炊いたものだ。これは簡単にできて美味しい。カネのない学生にはありがたい。これを教えてくれたのはやはりカネのない先輩であった。
桜飯のおいしさは、香ばしい香りと、ほんのりとした甘さ。これにしめじを入れるとしめじご飯になる。
その頃からずいぶん時間がたったある日、ふと思い立って、炊き立てのご飯に醤油をさっとふり、軽く混ぜてから食べてみた。念頭にはこの桜飯があったにちがいない。
すると、
「あ、これは卵かけご飯の甘さだ。」
と気付いたというわけである。
卵かけご飯という名前の通り、卵かけご飯の主役は卵で醤油は脇役だ。
まあ、本当は語の並びではご飯が主役になるし、ご飯あっての卵かけご飯なのだが、、
ともあれ醤油は味噌と並んで、日本の伝統を担う力強い味。
何にしてもそうだが、陰で支えるものが大変心強いというのは有難くも素晴らしいことである。
家族をはじめ、陰で支えてくださっている多くの方々についても同じことが言えそうだ。
卵かけご飯の話だったが、今更ながら皆様に心から感謝である。
2022/5/15
「みえざりしもの」2017
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